業務棚卸しのやり方|進め方5ステップとAIに任せる業務の決め方
AI導入を検討していても、何から手をつければよいか分からない――その状態を抜け出す一歩が業務棚卸しです。そのやり方を、本記事では5つのステップに整理しました。
棚卸し表の作り方から、洗い出した業務のうちAIに任せるものを判断する基準までが対象です。読み終えたときには、どの業務をAIに任せるかを自社で判断できる状態になります。
業務棚卸しとは?なぜAI導入の前に必要なのか

業務棚卸しとは、社内で行っている業務を一つひとつ洗い出し、内容や担当者、頻度を整理する取り組みです。AI導入を検討する前に、まず自社の業務を可視化しておく必要があります。
業務棚卸しの意味|「洗い出し」「業務の可視化」との違い
「洗い出し」は業務を列挙するだけの作業を指すことが多く、「業務の可視化」は業務の流れや情報の所在を見える形にする取り組みを広く指します。
業務棚卸しは、この洗い出しと可視化を1つの表にまとめ、担当者や頻度、課題まで整理する工程です。単に業務名を並べるのではなく、後の判断に使える形で記録する点が特徴です。
業務を洗い出せていないとAIに任せる業務を決められない
業務を洗い出せていないと、AIに何を任せるか判断できません。どの業務にどれだけ時間がかかっているかが分からなければ、AIに任せたときの効果も見積もれないためです。
当社でも、業務を役割単位に整理した結果として、AIエージェント4体がそれぞれ担当業務を持つ体制になっています。
業務棚卸しが必要とされる背景
時間外労働には、原則として月45時間・年360時間という上限が定められています。限られた時間で成果を出すうえで欠かせないのが、業務そのものの見直しです。
業務棚卸しでわかること・得られるメリット

業務棚卸しを行うと、日々の業務がどこで誰によって行われているかが明確になります。主なメリットは、可視化・属人化の解消・優先順位付けの3つです。
業務を「見える化」できる
業務棚卸しの表を見れば、誰がどの業務をどれくらいの頻度で行っているかが一目で分かります。担当者しか把握していなかった業務も、組織全体で共有できる状態になるのです。
新しく配属されたメンバーが最初に確認できるのも、この一覧です。
属人化を防ぎ、引き継ぎやすくなる
業務の手順を書き出しておけば、担当者が不在でも仕事の内容が分かる状態を作れます。当社でもCOO AI(スティーブ)がfreeeと連携し、売上取引の登録・入金確認・消込を手順化して担当しています。
手順が仕組みとして固定されているため、担当者の記憶や勘に依存しない運用です。棚卸しで書き出した手順は、そのまま引き継ぎ資料としても使えます。
改善・自動化の優先順位が付けられる
業務を洗い出して頻度や工数を並べると、どの業務から改善すべきかが見えてくるはずです。優先順位が明確になれば、限られたリソースを効果の大きい業務から投入できます。
改善の順序を決めずに着手すると、効果の薄い作業に時間を使ってしまいがちです。日本の時間当たり労働生産性はOECD加盟38カ国中28位(2025年12月公表・日本生産性本部調査)で、業務の見直しは各社共通の課題です。
出典:労働生産性の国際比較2025(公益財団法人日本生産性本部、2025年12月公表)
業務棚卸しの進め方【5ステップ】

ここからは、業務棚卸しの具体的な進め方を5つのステップに分けて解説します。目的の設定から優先順位付けまで、順を追って進める流れです。
Step1 目的を明確にする
業務棚卸しを始める前に、何のために行うのかを明確にします。「属人化を解消したい」「AIに任せる業務を見極めたい」など、目的によって整理すべき項目が変わります。
目的が曖昧なまま始めると、情報を集めても活用しにくい棚卸し表になりがちです。
Step2 対象範囲を決める
棚卸しの対象を全社一斉に広げると、情報が集まりすぎて整理が追いつかなくなります。まずは1つの部門や業務フローに範囲を絞り、対象を明確にしてから着手すると進めやすくなります。
範囲を区切ることは、後の分析や優先順位付けをしやすくするコツです。
Step3 業務を洗い出す(ヒアリング)
担当者へのヒアリングを通じて、日々行っている業務を1つずつ書き出していきます。「月末の予実管理レポートを作る」のような大きな括りだけでなく、作業単位まで分解することがポイントです。
当社では、この業務を売上取引の登録・入金確認・消込という作業単位まで分解しており、ここまで割って初めてAIに渡せる形になります。
Step4 棚卸し表に記入する
洗い出した業務を、担当者・頻度・工数・課題などの項目に沿って棚卸し表へ記入していきます。粒度を業務ごとにバラバラにせず、揃えて記入することがポイントです。
記入した内容は、次のステップで課題を抽出する材料になります。
Step5 課題を抽出し、優先順位を付ける
棚卸し表がまとまったら、改善が必要な業務や時間がかかっている業務を洗い出し、課題として整理します。すべてを一度に改善しようとせず、影響が大きい業務や着手しやすい業務から優先順位を付けるのがコツです。
この段階で、AIに任せられそうな業務にも自然と目が向くようになります。
業務棚卸しに使えるフレームワーク

洗い出した業務をどう整理するかで迷ったときの助けになるのが、既存のフレームワークです。ここでは、棚卸しの現場で使いやすい3つを取り上げます。
当社の秘書AI(ジャービス)が毎朝7:30に自動で報告しているのは、MTG10件分の顧客情報と打ち合わせ内容です。この運用は、下記のECRSでいえば、担当者が個別に確認していた内容を1つの報告に「結合」した形にあたります。フレームワークは新しい理論を学ぶためのものではなく、既にある業務を分類し直す物差しとして使うものです。
ECRS|改善の着眼点を4つの順番で考える
ECRSは、排除(Eliminate)・結合と分離(Combine)・入替えと代替(Rearrange)・簡素化(Simplify)の順に、業務改善の着眼点を検討する原則です。「なくせないか」「まとめられないか」「入れ替えられないか」「単純にできないか」の順で問い直します。
最初に「排除」を検討するのは、業務をなくせばコストも手間もかからないためです。棚卸し表の課題欄に、4つの問いを当てはめます。
出典:ECRS(改善の4原則)|用語集|日本能率協会コンサルティング(JMAC)
ABC分析|どの業務から手をつけるかを決める
ABC分析は、対象を構成比の大きい順に並べ替え、上位・中位・下位の3グループに分類して管理方針を使い分ける手法です。背景にあるのは、上位2割が全体の8割を占めるというパレートの法則。
棚卸しでは、工数や頻度の大きい業務から順に並べ、上位グループを優先して改善する使い方になります。すべての業務を平等に扱わない、という割り切りがここでは効いてきます。
出典:すぐに使える/小売店のABC分析表|J-Net21(独立行政法人中小企業基盤整備機構)
BPMN|業務フローを共通の記号で描く
BPMNは、OMG(Object Management Group)が策定した業務プロセスの標準表記法で、現行バージョンは2.0.2です。部門をまたぐ業務の流れを、誰が見ても同じ意味に読める記号で表現できる点が特徴です。
ただし、記法の習得には相応の学習時間がかかります。初回は表形式で洗い出し、複雑な業務が見つかった段階でBPMNを検討する順序であれば無理なく取り入れられます。
出典:About the Business Process Model and Notation Specification Version 2.0.2(OMG)
棚卸し表の項目設計|テンプレートに「AI適性」列を加える

棚卸し表の形式は自由。ただし、どの会社でも入れておきたい基本項目があります。ここでは、一般的な棚卸し表には無い視点として、「AI適性」という列を加える方法を提案します。
棚卸し表に入れる基本項目(業務名・担当者・頻度・工数・課題)
棚卸し表の基本項目は、業務名・担当者・頻度・工数・課題の5つです。頻度や工数は具体的な数値を書き込む欄というよりも、業務同士を比較するための記入欄として設けます。
課題欄には、時間がかかる・ミスが起きやすいなど、気になる点を短く記録しておきます。請求書発行のような定型業務は、【コピペでOK】たった10分!AIで請求書作成・送信を完全自動化する神マニュアルでも紹介しています。
独自提案:「AI適性」列を追加する考え方
追加するのは、業務が定型的か、判断が属人的か、情報の在り処が決まっているかという3つの観点でAI適性をメモする列です。先ほど触れた当社の秘書AI(ジャービス)による朝7:30の自動報告を、この表の1行に置き換えてみます。
業務名「朝会前の情報突合」、頻度「毎日」、AI適性「高」と記入できます。
当社が実際に行っている業務棚卸しのやり方

ここで紹介するのは、当社が実際にどのように業務棚卸しを行い、AIエージェントへ振り分けているかという実例です。
5名の業務をAIエージェント4体にどう振り分けたか
当社は従業員5名で、AIエージェント4体と共に会社を運営しています。秘書ジャービス・COOスティーブ・CMOナターシャ・CTOトニーという役割ごとに、担当業務を分けています。
この役割分担は、あらかじめ業務を洗い出して整理した結果です。先に洗い出したからこそ、4体それぞれの担当を決められました。
詳しい運用は、1人社長がAI社員4人を雇ったら、会社が「回る」ようになった話で紹介しています。
COO AIがfreee連携で担っている業務(売上取引登録・入金確認・消込・月末の予実管理レポート)
COO AI(スティーブ)が担当しているのは、freeeと連携した売上取引の登録・入金確認・消込の自動化です。月末には、この情報をもとに予実管理レポートも作成します。
この業務をCOO AIに任せたのは、棚卸しの段階で「定型的で判断の属人性が低い」と分かっていたためです。
業務棚卸しが形骸化する・失敗する原因と対策

「作って終わり」になる典型パターン
業務棚卸し表を作った直後は満足感がありますが、その後の改善サイクルが回らずに放置されるケースが少なくありません。
表が更新されないまま業務内容だけが変わっていくと、記録と実態は次第にずれていくものです。
形骸化を防ぐために決めておくべきこと(誰が・どのツールで・どう引き継ぐか)
形骸化を防ぐには、誰が棚卸し表を更新するか、どのツールで管理するかをあらかじめ決めておく必要があります。当社のCOO AIによるfreee連携も、作って終わりではなく現在も継続して稼働している運用例です。
更新の担当者と、更新するタイミング。この2つを決めておけば、棚卸し表は使い続けられます。
棚卸し表を見直すタイミングの決め方
見直しの間隔を決める基準になるのは、業務の変化の速さです。組織変更や新しいツールの導入といった、業務の中身が変わる出来事を見直しの起点にする方法もあります。
日付で機械的に区切るより、変化が起きたときに更新する運用のほうが、実態とのずれは生まれにくくなります。
棚卸し後、AIに任せる業務をどう判断するか

棚卸し表に「AI適性」列を設けたら、次に必要なのが具体的な判断基準です。独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の調査では、AI導入の効果として「業務が効率化したり迅速化した」を挙げた企業が91.6%と最も多くなっていました(2026年7月公表)。
AIに任せられる業務の範囲は変わり続けているため、ここでは2026年9月時点で判断しやすい3つの軸を示します。
出典:国内企業のDX動向・AI活用動向のポイントを公開(独立行政法人情報処理推進機構、2026年7月公表)
導入の実例は全国約90施設・累計53,000件を支える無痛MRI乳がん検診の裏側で──ドゥイブス・サーチ社、OpenClaw導入1ヶ月レポートで紹介しています。棚卸し後の進め方は中小企業のAI導入支援完全ガイド|失敗しない進め方と成功事例で解説しています。
判断軸1|業務が定型的かどうか
毎回同じ手順で進められる業務は、AIに任せやすい典型例です。逆に、案件ごとに進め方が変わる業務は、そのままAIに置き換えにくい傾向があります。
まず確認したいのは、業務の手順が毎回同じかどうかです。
判断軸2|判断の属人性が低いかどうか
担当者の経験や勘に頼らず、決まったルールで判断できる業務ほどAIに向いています。属人性が高い業務で先に着手すべきなのは、判断基準の言語化です。
棚卸し表の「判断の属人性」欄が、この見極めに役立ちます。
判断軸3|情報ソースが構造化されているかどうか
業務に必要な情報が、Excelやクラウド会計など決まった形式のデータとして存在するかも重要な判断材料です。情報が構造化されているほど、AIにとって処理しやすい業務です。
当社のCOO AI(スティーブ)がfreee連携の業務を担えている背景にも、会計データが決まった形式で蓄積されているという条件があります。逆に、担当者のメモや口頭のやりとりにしか情報がない業務は、記録の形を整えることが先です。
当社(あなたのAI顧問株式会社)について
当社(あなたのAI顧問株式会社)は、東京都品川区に拠点を置き、2025年12月に設立しました。従業員5名とAIエージェント4体で会社を運営しており、業務棚卸しの実践例そのものが当社の日常です。
代表の黒山結音は、営業現場で培った課題を聞く力、エンジニアとしての実装力、ベンチャー立ち上げで培った経営視点での優先順位付けという3つの軸を持っています。自社の業務をAIにどう任せるか迷っている方は、AI顧問にご相談ください。
業務棚卸しのやり方についてよくある質問
Q1. 業務棚卸しのテンプレート・フォーマットは無料で使えますか?
業務棚卸しは、特別なソフトがなくても始められます。Excelやスプレッドシートで、業務名・担当者・頻度・工数・課題の列を用意すれば、自社の棚卸し表を自作できます。大切なのは体裁ではなく、自社の業務に合う列を自分で決めることです。
Q2. 業務棚卸しはどのように進めればよいですか?
業務棚卸しは、目的の明確化→対象範囲の決定→ヒアリングによる洗い出し→棚卸し表への記入→課題の抽出と優先順位付け、という5つのステップで進めます。各ステップを順番に踏むことで、情報が整理された使いやすい棚卸し表が完成します。
Q3. 業務棚卸しにはどのくらいの期間・工数がかかりますか?
期間や工数は、対象とする部門の数や業務の複雑さによって大きく変わるため、一律の目安を示すことは困難です。まずは対象範囲を1つの部門や業務フローに絞り、そこでかかった時間をもとに全体の見通しを立てる進め方が実践的です。
Q4. 従業員5人以下の小規模企業でも業務棚卸しは必要ですか?
小規模な企業ほど、1人が複数の業務を兼任しやすく、属人化のリスクはむしろ高くなります。当社自身も従業員5名という規模で、AIエージェント4体に業務を振り分けている会社です。人数が少ないからこそ、業務を洗い出して整理する価値があります。
Q5. 棚卸しした業務のうち、AIに任せられるかどうかはどう判断すればいいですか?
判断軸は3つあります。業務が定型的かどうか、判断が属人的でないかどうか、情報が構造化されているかどうかです。この3つの条件が揃うほど、AIに任せやすい業務になります。
まとめ:業務棚卸しから始めるAI活用の第一歩
業務棚卸しは、属人化の解消や業務改善の土台であると同時に、AIに何を任せるかを決めるための判断材料になります。進め方は、目的→範囲→洗い出し→記入→優先順位付けという5つのステップです。
棚卸し表に「AI適性」列を加えれば、定型性・属人性の低さ・情報の構造化度という3つの判断軸をそのまま活用できます。まずは自社の業務を1つ書き出すところから始め、AIに任せる業務の判断に迷ったらAI顧問にご相談ください。
WRITERライター紹介
黒山結音
あなたのAI顧問株式会社 代表取締役
「AIは現場で使えなきゃ意味がない」を掲げ、30社以上にAI顧問として導入から定着までサポート。OpenClaw・Claude・ChatGPTなどAIツールを実務でフル活用し、AI駆動経営を実践。本メディアでは、実際の現場で効果が出た事例や、AI初心者がつまずく「最初の一歩」を、専門用語を極力使わずに解説します。
OpenClaw / Claude Code / Codex / Cursor / Manus