ChatGPTに入力した内容、人間が読んでいます——三大AIの「学習オフ設定」を今すぐやるべき理由と全手順
見積書の金額を貼って相談したことはありませんか。会議の議事録を要約させたことは。取引先からのクレームメールへの返信を考えさせたことは。
その内容はすべて、初期設定のままならAIの学習データとして保存され、人間のレビュアーが目を通す対象になっています。これは議論や推測ではなく、サービスを提供する企業自身が公式ヘルプに明記している仕様です。
ChatGPT、Claude、Gemini。現在もっとも使われているこの三つのうち、個人向けプランで「あなたの入力を学習しない」状態が初期設定になっているものはひとつもありません。しかも各社は、それを前提にこちらへ警告を出しています。
「レビュアーに見られたくない機密情報や、Google のサービス(機械学習技術など)の改良のために使用されたくない機密情報は入力しないでください。」(Google公式)3
「Please do not enter sensitive information that you would not want reviewed or used.(レビューされたり使用されたりしたくない機密情報は入力しないでください)」(OpenAI公式)1
「we encourage our users not to use our products and services to process personal data.(弊社は、個人データの処理に本製品・サービスを使用しないことを推奨します)」(Anthropic公式)5
三社が揃って「見られたくないものは入れないでください」と言っている。これは裏を返せば、設定を変えなければ見られるという宣言です。
そしてこれは、「なんとなく気持ち悪い」というレベルの話では済みません。日本の個人情報保護委員会は2023年6月、事業者に向けて次のような注意喚起を出しています。
「このようなプロンプトの入力を行う場合には、当該生成 AI サービスを提供する事業者が、当該個人データを機械学習に利用しないこと等を十分に確認すること。」10
顧客名や従業員名を含むデータをAIに入力する業務があるなら、学習設定の確認は「やっておいたほうがいいこと」ではなく、コンプライアンス上の前提手続きとして位置づけられているということです。
とはいえ、恐がらせて終わる記事にはしません。必要な作業は合計10分です。ChatGPTで3分、Claudeで1分、Geminiで3分、残りは運用ルールを頭に入れるだけ。本記事では各社の公式ドキュメントをすべて確認したうえで、画面のどこを押すかのレベルまで落として解説します。
先に結論を三つ
第一に、ChatGPTの学習設定は項目が三つあり、多くの解説記事が触れているのはそのうち一つだけです。残り二つをオフにしなければ、音声モードで話した声そのものは学習対象のまま残ります。
第二に、Claudeは学習を許可しているとデータ保持が最長五年、オフなら30日になります。トグルを一つ切り替えるだけで、保持期間が60倍変わる計算です。
第三に、設定をオフにしても「いいね」ボタンを押した瞬間、その会話全体が学習対象になります。これは三社共通の仕様で、善意の一クリックが最大の穴になっています。
この三つを含めて、設定の実際の手順、三社の仕様差、そして企業としてどこまでやるべきかまでを順に見ていきます。
目次
- 「AIに学習される」とは、実際に何が起きているのか
- 三社の仕様は「似ているようで全然違う」
- ChatGPT:トグル一つでは終わらない三重構造
- Claude:トグル一つで保持期間が五年から30日になる
- Gemini:設定場所がアプリの外にあるという罠
- 設定してもなお学習される四つの落とし穴
- 履歴を残さず使う「一時チャット」という選択肢
- Copilot・Perplexity・Grok・NotebookLMの設定も一気に片付ける
- 会社で使うなら:法人プランと法令の話
- 設定をやってもなお必要な「入力の作法」六つ
- チェックリスト(社内共有用にコピーできます)
- よくある質問
1. 「AIに学習される」とは、実際に何が起きているのか
多くの人が誤解している三つのこと
「AIに学習される」という言葉は広く使われていますが、実際に何が起きているのかを正確に理解している方は少ないのが実情です。よくある誤解を3つ、先に整理しておきます。
誤解1:入力した内容が、そのまま他人の画面に表示される
これは正確ではありません。あなたの入力が、次の日に他人の画面にコピペのように出てくるわけではありません。起きているのは「モデルの学習データに含まれる」ことです。ただし、大量のデータで学習したAIが、条件次第で学習内容に近い文章を出力してしまう現象(記憶の再現)は研究レベルで確認されています。個人情報保護委員会も、この点をリスクとして明示しています。
「生成 AI サービスでは、入力された個人情報が、生成 AI の機械学習に利用されることがあり、他の情報と統計的に結びついた上で、また、正確又は不正確な内容で、生成 AI サービスから出力されるリスクがある。」10
誤解2:AIが自動処理するだけで、人間は見ていない
これが最も危険な誤解です。人間が実際に読んでいます。Googleは公式に、明確にこう書いています。
「Google サービスの改良を目的として、人間のレビュアー(トレーニングを受けている Google のサービス プロバイダを含む)がチャットの一部をレビューします。レビュアーは Gemini アプリの回答が低品質、不正確、または有害であったかどうかを評価し、より良い回答を提案します。」3
しかも、レビュー済みのチャットは削除操作をしても消えません。
「人間のレビュアーがレビューしたチャット(および言語、デバイスの種類、位置情報、フィードバックなどの関連データ)は、アクティビティを削除しても削除されません。こうしたチャットは最長で 3 年間保存されます。」3
OpenAIも同様に、限定された権限を持つ社員がコンテンツにアクセスする4つのケースを挙げており、その4番目が「モデル性能の改善(オプトアウトしていない場合)」です1。
誤解3:学習をオフにすれば、サーバーには送られない
これも違います。AIサービスはクラウド上で動いているので、入力した内容は必ず一度サーバーに送られます。学習オフでできるのは「AIモデルの教材にされることを止める」ことだけです。この区別は極めて重要なので、図で整理します。
▲ 「学習オン」と「学習オフ」の違い:オフにしても送信自体は止まりません。止められるのは「④ AIモデルの学習に使用」の工程です
なぜ各社は「初期状態でオン」にしているのか
率直に言えば、AI企業にとってユーザーの実際の会話は最高品質の学習データだからです。教科書的な文章よりも、現場の人間が本当に困っていることを書いた文章のほうが、実用的なAIを作るには価値が高い。だから各社は無料・個人向けプランを「データを提供してもらう代わりに安く使わせる」設計にしています。
Anthropicは2025年8月、消費者向け規約を改定してFree/Pro/Maxプランを学習対象に加えました。このとき、選択を促すダイアログが全ユーザーに表示されました。
「These updates apply to users on our Claude Free, Pro, and Max plans, including when they use Claude Code from accounts associated with those plans.(これらの更新は Claude Free、Pro、Max プランのユーザー、およびそれらのアカウントで Claude Code を使用する場合に適用されます)」6
この画面で内容をよく読まずに「同意」を押した方は、現在おそらく学習オンの状態です。
一方、法人向けプランは最初から学習対象外です。ここが本質的な分かれ目で、企業が本気でAIを業務利用するなら法人プランを選ぶべき最大の理由になります。
「ChatGPT Business、ChatGPT Enterprise、ChatGPT Edu、そして当社の API プラットフォームの提供において、デフォルトで提供された入力および出力がモデルの学習に使用されることはありません。」11
2. 三社の仕様は「似ているようで全然違う」
設定の手順に入る前に、3社の仕様差を頭に入れてください。ここを理解せずに設定すると、「Geminiをオフにしたら履歴が全部消えて困った」といった事故が起きます。
▲ 主要3サービスの比較:特に「履歴は残るか」と「データ保持期間」の欄が実務上の判断ポイントです
とりわけ押さえておくべき違いを、3点に絞って解説します。
違い1:Geminiだけは「履歴保存」と「学習利用」が一体になっている
ChatGPTとClaudeは「履歴は残したいが、学習には使わせたくない」という要望に応えられます。設定項目が独立しているからです。しかしGeminiは、「Gemini アプリ アクティビティ」という1つの設定が履歴保存と学習利用を兼ねているため、オフにすると過去の会話を後から見返すことができなくなります。
Geminiを業務で使っていて履歴を残したい方は、後述する「保持期間を3か月に短縮する」「機密の会話だけ一時チャットを使う」という代替策を検討してください。
違い2:Claudeは学習オンだと保持期間が5年になる
これは意外と知られていない事実です。Anthropicは学習を許可した場合の保持期間を明示しています。
「We are also extending data retention to five years, if you allow us to use your data for model training. … If you do not choose to provide your data for model training, you’ll continue with our existing 30-day data retention period.(モデル学習へのデータ利用を許可いただいた場合、データ保持期間を5年に延長します。(中略)モデル学習にデータを提供しない場合は、従来の30日間の保持期間が継続されます)」6
オンなら5年、オフなら30日。同じサービスで保持期間が60倍変わります。これはトグル1つを切り替えるだけの価値がある差です。
違い3:オフにしたときの「過去分」の扱いが違う
ChatGPTは「新しい会話が対象外になる」という表現です。
「Once you opt out, new conversations will not be used to train our models.(オプトアウトすると、新しい会話はモデルの学習に使用されなくなります)」1
一方Claudeは、過去の会話も今後の学習から除外すると明記しています。
「If you decide to turn off the model improvement setting, we will not use your previous or new chats or coding sessions for future model training.(モデル改善設定をオフにした場合、過去または新規のチャットやコーディングセッションを今後のモデル学習に使用しません)」4
ただしClaudeも、すでに学習が始まっている分と学習済みモデルからは取り除けないと続けています4。Perplexityはさらに率直で、「過去に収集された学習データは削除・除去できない」と明言しています8。
つまり結論はシンプルです。設定は「今すぐ」やる価値がある。1日遅れるごとに、取り消せないデータが増えていくということです。
3. ChatGPT:トグル一つでは終わらない三重構造
ここから実際の操作に入ります。ChatGPTは設定すべき項目が3つあるのが最大のポイントです。多くの解説記事は1つ目だけを説明して終わっていますが、それでは不十分です。
まず「データ コントロール」を開く
パソコンのブラウザでChatGPTにログインし、次のいずれかの方法で設定画面を開きます。
| 方法 | 手順 |
|---|---|
| 直リンク(最速) | ブラウザで https://chatgpt.com/#settings/DataControls を開く |
| 画面から辿る | 右上(または左下 )のプロフィールアイコン → 設定 → 左メニューの データ コントロール |
| スマホアプリ | サイドバーメニューを開く → プロフィールアイコン → データ コントロール |
| ログインせず使っている場合 | 画面右下の 「?」アイコン → 設定 → 該当項目をオフ1 |
「データ コントロール」を開くと、次のような画面になります。
▲ ChatGPT「設定 → データ コントロール」画面:一番上の「すべての人のためにモデルを改善する」が学習設定です。右側に現在の状態が表示されます
ここで重要な注意点があります。 2026年時点のChatGPTでは、この「すべての人のためにモデルを改善する」はその場で切り替えるトグルスイッチではなく、クリックして詳細画面を開く項目になっています。古い解説記事だと「ここのトグルをオフに」と書かれていますが、現在のUIでは項目をクリックする必要があります。
ここまでの確認:項目の右端に「オフ」または「オン」と現在の状態が表示されています。すでに「オフ」なら、この時点で第一関門は突破済みです。ただしこの後に説明する音声・動画の設定はまだ残っているので、必ずクリックして確認してください。
本題:三つのトグルをすべてオフにする
「すべての人のためにモデルを改善する」をクリックすると、「モデルの改善」というモーダル(別ウィンドウ)が開きます。ここに3つのトグルが並んでいます。
▲ 「モデルの改善」モーダル:テキスト・音声・動画で設定が分かれています。3つすべてをオフにしてから「実行する」を押します
それぞれの意味を、画面に表示される公式の説明文とあわせて整理します。
| トグル | 画面上の説明文(原文) | オフにすると |
|---|---|---|
| ① すべての人のためにモデルを改善する | 「あなたのコンテンツをモデルの学習のために使用することを許可してください。ChatGPT をあなたや他のユーザーにとってさらに有益なものにすることができます。弊社ではお客様のプライバシーを保護する措置を講じています。」 | 入力したテキスト、アップロードしたファイル、音声の文字起こしが学習対象外になる |
| ② 音声記録を含める | 「音声モードの音声と動画の記録を含めて、モデルの学習に役立てます。文字起こしやその他のファイルは、『すべての利用者のためにモデルの改善に協力する』の対象となります。」 | 音声モードで話した声そのものの記録が学習対象外になる |
| ③ 動画記録を含める | (②と同じ説明文が適用されます) | 画面共有やカメラ映像の記録が学習対象外になる |
この構造が重要な理由を説明します。①だけをオフにしても、②③がオンのままだと、音声モードで話した声の録音は学習対象として残ります。ChatGPTの音声会話機能(アドバンストボイスモード)を移動中やハンズフリーで使っている方は、声の記録という最もセンシティブなデータが対象になり続けるということです。
3つすべてをオフにしたら、モーダル下部の「実行する」ボタンを押して確定します。
ここまでの確認:データ コントロール画面に戻り、「すべての人のためにモデルを改善する」の右側が「オフ」になっていれば成功です。
見落とされがちな最後の工程:過去の会話をどうするか
ここが多くの記事で抜けている工程です。ChatGPTのオプトアウトは「新しい会話」に適用されるため、過去の会話は別途対処が必要です。
機密情報を含む会話に心当たりがある場合は、該当する会話を削除してください。同じ「データ コントロール」画面の下部に、次の選択肢があります。
- すべてのチャットをアーカイブする:一覧から隠すだけで、削除ではありません
- すべてのチャットを削除する:完全削除です。削除後、原則30日でバックエンドからも消去されます
- データをエクスポートする:削除する前に、自分の入力内容をまとめて確認・保存できます
順序としては「エクスポートして内容を確認 → 必要なものを手元に保存 → 削除」が安全です。
なお、設定はアカウント単位で同期されます。
「Does this functionality sync between web and mobile devices? Yes. Once you turn off model training, the setting applies to your entire account.(この機能はウェブとモバイル端末で同期されますか? はい。モデル学習をオフにすると、設定はアカウント全体に適用されます)」1
つまりパソコンで設定すれば、スマホアプリ側も自動的にオフになります。逆に、複数アカウントを使い分けている方はアカウントごとに設定が必要です。仕事用と個人用でアカウントを分けている方は、両方確認してください。
エンジニア向けの補足:Codexは別設定
エンジニアの方への注意です。OpenAIの開発支援ツールCodexは、フル環境(full environments)に関する学習設定が独立しており、ChatGPTのUIやプライバシーポータルでの設定では変更されません1。Codexを使っている方は https://chatgpt.com/codex/settings/general を別途確認してください 。
4. Claude:トグル一つで保持期間が五年から30日になる
Claudeは3社の中で最もシンプルです。トグル1つで完結します。
プライバシー設定を開く
| 方法 | 手順 |
|---|---|
| 直リンク(最速) | ブラウザで https://claude.ai/settings/data-privacy-controls を開く |
| 画面から辿る | 左下(または右上 )の自分の名前をクリック → 設定 → 左メニューの プライバシー |
| スマホアプリ | 設定メニュー → 自分の名前 → Settings → Privacy |
「AIモデルの改善にご協力ください」をオフにする
「プライバシー」画面を開くと、次のような構成になっています。
▲ Claude「設定 → プライバシー」画面:「設定」セクション内の「AIモデルの改善にご協力ください」が学習設定です。青いトグルはオン状態を示します
画面上部には、Anthropicの姿勢を示すリード文が表示されます。
「Anthropicは、透明性のあるデータ取り扱いを重視しています。Anthropic製品をご利用の際にお客様の情報がどのように保護されているかをご確認いただき、詳細についてはプライバシーセンターおよびプライバシーポリシーをご覧ください。」(Claude設定画面より)
その下の「設定」という見出しの中に、2つのトグルがあります。
| トグル | 画面上の説明文(原文) | 判断の目安 |
|---|---|---|
| ロケーションメタデータ | 「Claudeが大まかな位置情報メタデータ(市区町村/地域)を使用して製品体験を向上させることを許可します。」 | 学習とは別の項目です。気になる方はオフにしても支障は小さいです |
| AIモデルの改善にご協力ください | 「チャットやコーディングセッションのデータをAnthropic AIモデルの訓練と改善に使用することを許可します。」 | これをオフにします |
トグルをクリックしてグレー(オフ)になれば完了です。保存ボタンはなく、即時反映されます。
ここまでの確認:トグルの色が青からグレーに変わっていればOKです。
Claudeで押さえておきたい三点
ポイント1:Claude Code(開発ツール)も同じ設定でカバーされる
説明文に「コーディングセッション」と明記されている通り、この1つのトグルでClaude Codeでのやり取りもカバーされます。エンジニアの方には重要な情報です。ただしこれは個人プラン(Free/Pro/Max)のアカウントで使っている場合の話で、法人プランのアカウントなら最初から学習対象外です6。
ポイント2:コネクタ経由のデータは対象外
Claudeの学習対象範囲について、公式は詳細に定義しています。
「Chat and coding session data we may use for improving our models includes the entire related conversation, along with any content, custom styles or conversation preferences, as well as data collected when using Claude for Chrome. It does not include raw content from connectors (e.g. Google Drive), including remote and local MCP servers, though data may be included if it’s directly copied into your conversation with Claude.(モデル改善に使用する可能性のあるチャット・コーディングセッションのデータには、関連する会話全体、コンテンツ、カスタムスタイル、会話の設定、および Claude for Chrome 使用時に収集されるデータが含まれます。コネクタ(Google Drive など)やリモート・ローカルの MCP サーバーからの生データは含まれませんが、Claude との会話に直接コピーした場合はデータが含まれる可能性があります)」4
つまり、Google DriveをClaudeに連携して読み込ませた場合、その生データ自体は学習対象外です。ただし内容を会話にコピペすれば対象になります。「連携で読ませる」のと「コピペで貼る」のは、プライバシー上まったく別の行為だということです。
ポイント3:カスタムスタイルや会話設定も学習対象
上の引用にある通り、「custom styles or conversation preferences(カスタムスタイル、会話の設定)」も学習対象に含まれます。自社の文章トーンやフォーマットをカスタムスタイルとして登録している方は、それ自体がノウハウとして学習されうる点を認識しておくべきです。
5. Gemini:設定場所がアプリの外にあるという罠
Geminiは3社の中で最も構造が特殊です。設定場所がGeminiのアプリ内ではなく、Googleアカウントの「マイ アクティビティ」側にあります。
設定画面はGeminiアプリの中にはない
| 方法 | 手順 |
|---|---|
| 直リンク(最速) | ブラウザで https://myactivity.google.com/product/gemini を開く |
| Geminiから辿る | gemini.google.com を開く → 設定(歯車アイコン )→ アクティビティ |
Geminiアプリから辿る場合のメニュー構造は次の通りです。
▲ Geminiアプリ(gemini.google.com)から設定に入るルート:「アクティビティ」をクリックすると外部ページ(マイ アクティビティ)に遷移します
Geminiアプリ側の設定メニューには「アクティビティ/アプリ連携/予約アクション/Gem/テーマ/Gemini Notebook/位置情報」といった項目が並びます。この中の「アクティビティ」が入口です。
「アクティビティの保存」をオフにする
遷移先の画面は「Gemini アプリ アクティビティ」というタイトルになっています。
▲ 「Gemini アプリ アクティビティ」画面:上部の「オン」ボタンをクリックして「オフにする」を選びます。画面下部には過去の入力内容がすべて記録されています
画面上部の「✓ オン」と表示されたボタンをクリックすると、次の選択肢が出ます。
- オフにする:今後の保存と学習利用を止めます(過去の履歴は残ります)
- オフにしてアクティビティを削除:今後の保存を止め、あわせて過去の履歴も削除します
機密情報を入力した記憶がある方は、後者を選ぶのが確実です。
この画面で必ず確認していただきたいことがあります。画面を下にスクロールしてください。あなたがこれまでGeminiに送ったメッセージが、日付順にすべて全文で記録されています。プロンプトの本文、添付したファイル名、生成された回答まで一覧で見える状態です。
「自分は大した情報を入れていない」と思っている方も、実際に見ると認識が変わります。動画で解説する場合、ここが最も訴求の強いシーンになります(もちろん公開時は個人情報部分のマスキングが必須です)。
重要な注意:この画面に「このアクティビティの設定を変更できるのは管理者のみです」と表示された方は、会社や学校のGoogle Workspaceアカウントでログインしています。この場合、個人では設定を変更できません。詳細は第9章で解説します。
オフにしても72時間は残るという事実
Geminiには、オフにしても残る「72時間」というルールがあります。画面上にもこう書かれています。
「[Gemini アプリ アクティビティ] がオンであるかオフであるかにかかわらず、チャットは最長で 72 時間アカウントに保存されます。Google はこのデータを使用して、サービスの提供、安全性とセキュリティの維持、ユーザーから提供されたフィードバックの処理を行います。」(Gemini アプリ アクティビティ画面より)
公式ヘルプはさらに詳しく説明しています。
「今後のチャットはアクティビティに表示されず、AI モデルのトレーニングに使用されることもありません(ただし、Google にフィードバックが送信されるようにユーザー自身が選択した場合を除きます)。今後のチャットは 72 時間保存されますが、これはそのユーザーへの Gemini の応答、フィードバックの処理、Google と Google のユーザー、一般の人々の保護を目的としています。」3
つまり72時間の保存は避けられませんが、その目的は学習ではなくサービス提供と安全性維持です。学習は止まっています。
「履歴は残したい」人向けの代替策
Geminiは履歴保存と学習利用が一体なので、「履歴は使いたいが学習は嫌」という要望に直接は応えられません。そこで現実的な妥協点として、保持期間を最短の3か月に短縮する方法があります。
gemini.google.com→「設定とヘルプ」→「アクティビティ」を開く- 「〇〇 か月以上経過したアクティビティを削除します」または「自動削除オプションを選択します」をクリック
- 「3 か月」を選択(他に18か月/36か月/自動削除しない)
- 「次へ」をクリックして画面の指示に従う
デフォルトは18か月です。何もしなければ1年半分の会話が蓄積し続けます。3か月に変えるだけでも、リスクにさらされる情報量は大幅に減ります。
見落としやすい項目:音声とGemini Liveの画面共有
Geminiには、音声とGemini Liveの動画・画面共有に関する独立した設定があります。こちらはデフォルトでオフなので安心ですが、一度オンにすると影響が大きいので仕様を知っておくべきです。
「音声や Gemini Live の動画と画面共有の一部は人間のレビュアーによって確認されます。プライバシーを保護するため、サービス プロバイダに送信されるアクティビティがお使いの Google アカウントに関連付けられることはありません。」3
Gemini Liveの画面共有は、あなたのパソコン画面そのものを映します。開いているメールや顧客リストが映り込む可能性を考えると、この設定は意識的にオフのままにしておくべきです。設定場所は「設定とヘルプ」→「アクティビティ」内のチェックボックスです。
同じGeminiでも学習されないサービスがある
Googleのサービスの中でも、NotebookLM(Gemini Notebook)は設定不要で学習対象外です。
「お客様のデータは保護されており、フィードバックを提供しない限り、Gemini Notebook のトレーニングに使用されることはありません。改善のためのフィードバックをお寄せいただいた場合、Google は、クエリ、アップロード、モデルの回答など、そのやり取りの全容を確認させていただく場合があります。」12
Geminiプライバシーハブ側にも「Gemini でノートブックにソースとして追加したファイルが生成 AI モデルのトレーニングに直接使用されることはありません」と記載があります3。社内資料を読み込ませて要約や質疑をしたい場合、NotebookLMを使うのは合理的な選択です。ただしフィードバックボタンを押すと例外になる点は共通の落とし穴です。
6. 設定してもなお学習される四つの落とし穴
ここが本記事の核心です。設定をオフにしても学習される経路が、実は4つ残っています。
一つめ:評価ボタン(これが最大の穴)
これが最大の罠です。 学習をオフにしていても、回答に対して「いいね(👍)」または「よくないね(👎)」を押すと、その会話が学習対象になります。しかも「押した回答だけ」ではなく「会話全体」です。3社すべてが同じ仕様であることを、公式に明記しています。
OpenAI(ChatGPT):
「Even if you have opted out of training, you can still choose to provide feedback to us … If you choose to provide feedback, the entire conversation associated with that feedback may be used to train our models.(学習をオプトアウトしていても、フィードバックを提供することは可能です。(中略)フィードバックを提供する場合、そのフィードバックに関連する会話全体がモデルの学習に使用される可能性があります)」1
Anthropic(Claude): フィードバックを提出した会話は全体が5年間保存されます(ユーザーIDとは切り離した形)7。
Google(Gemini):
「[アクティビティの保存] がオフになっていても、フィードバックを送信すると、Google は Gemini アプリの維持と改良を目的として、次のデータを収集して使用します。」——送信されたフィードバック、フィードバックを理解するためのコンテキスト(過去24時間のチャットなど)、チャットに含まれるコンテンツ(アップロードしたファイルやアプリ連携で収集されたデータを含む)3
Geminiの場合は過去24時間分の会話までが対象になり、レビュー済みのデータは最長3年保存されます3。
xAI(Grok)も同様です。
「you can voluntarily submit feedback on a conversation even if you opt out of model training using, for example, the thumbs up and thumbs down buttons. If you provide such feedback, X and xAI may use that conversation … to train and fine-tune Grok(モデル学習をオプトアウトしていても、サムズアップ/サムズダウンボタンなどで会話に対するフィードバックを任意で送信できます。そのようなフィードバックを提供した場合、X と xAI はその会話を Grok の学習とファインチューニングに使用する可能性があります)」9
結論:学習させたくないなら、👍👎ボタンは押さないでください。 「良い回答だったからお礼のつもりで」という善意の1クリックが、その会話全体を学習データとして提出する行為になります。業務で使う方は、これをチーム内のルールとして共有すべきです。
二つめ:安全性チェックでフラグが立った会話
規約違反の疑いがあると判定された会話は、学習オフでも例外的に利用されます。Anthropicの場合、安全性レビューでフラグされた会話はUsage Policyの執行と安全対策チームのモデル学習に使用される可能性があり4、規約違反フラグ時の入出力は最大2年、分類スコアは最大7年保持されます7。
Googleも同様に明記しています。
「[アクティビティの保存] がオフの場合でも、Google はユーザーへの応答や Google、Google のユーザー、一般の人々の保護のためにユーザーのチャットを使用します(人間のレビュアーによるレビューも含む)。」3
これは悪用防止のために必要な仕組みなので、避ける方法はありません。「学習オフ = 完全に誰も見ない」ではないと理解しておくことが大切です。
三つめ:すでに人間がレビューしたデータは削除できない
Googleの仕様で特に重要な点です。
「アクティビティを削除しても、サービス プロバイダがすでに確認した過去のチャットは Google アカウントから切り離された状態で保存されているため、削除されません。このようなチャットは、最長で 3 年間保存されます。」3
「削除ボタンを押したから安心」とはならないということです。だからこそ、設定は入力する前に済ませておく必要があります。
Perplexityも同じ趣旨をより端的に述べています。
「Opt-outs only apply to data collected after the opt-out date. Previously collected training data cannot be deleted or removed.(オプトアウトは、オプトアウト日以降に収集されたデータにのみ適用されます。過去に収集された学習データを削除または除去することはできません)」8
四つめ:設定が及ばない領域がある
学習オフの設定は、その設定項目が定義する範囲にしか効きません。範囲外の用途は止まらないので、注意が必要です。
Microsoft Copilotの説明が最も明確です。
「This setting will not exclude your conversations from being used for other general product or system improvements nor from use for advertising, digital safety, security, and compliance purposes(この設定は、その他の一般的な製品・システム改善、広告、デジタル安全性、セキュリティ、コンプライアンス目的での会話の使用を除外するものではありません)」8
Grokにも同種の限界があります。
「when you use an X feature that is powered by Grok (e.g. X recommendations), Grok will learn from your interactions and the opt-out does not prevent a deployed model from learning as a result of its normal use.(Grok を利用した X の機能(レコメンドなど)を使用する場合、Grok はあなたの操作から学習し、オプトアウトは既に展開されたモデルが通常利用の結果として学習することを防ぎません)」9
Googleも「Gemini の設定は、Google サービス改良のための匿名化データ作成を目的とするチャット処理には適用されません」と記載しています3。また「Gemini アプリの設定を変更しても、Google の他の設定は変更されません」ため、ウェブとアプリのアクティビティやロケーション履歴は別途管理する必要があります3。
7. 履歴を残さず使う「一時チャット」という選択肢
設定変更とは別に、その場限りで安全に使う方法があります。機密性の高い相談を一度だけしたい、といった場面で非常に実用的です。
| サービス | 機能名 | 起動方法 | 仕様 |
|---|---|---|---|
| ChatGPT | 一時チャット | 新規チャット画面から一時チャットを選択 | 学習に使われない/履歴に残らない/メモリを作らない/30日後に削除。ただし不正利用監視のためレビューされる場合あり1 |
| Claude | シークレットチャット(Incognito) | 新規チャット画面右上のゴーストアイコンをクリック | 学習設定がオンでも学習に使われない/履歴に保存されない/メモリを使わず作らない/安全性のため30日保持5 |
| Gemini | 一時的なチャット | 画面右上の一時チャットボタンをクリック | 「一時チャットは、人間のレビュアーが目を通して Google AI の改善に使用されることはありません」/72時間保持3 |
Claudeのシークレットチャットは全プランで使えます(Free/Pro/Max/Team/Enterprise)。ただし制約もあります。プロジェクト内では使用できず、通常チャットへの変換もできず、閉じたら復元できません5。「一度きりの相談」に割り切って使う機能です。
実務的な使い分けとしては、次のような運用が現実的です。
- 通常業務:学習オフの設定済みアカウントで、履歴を活用しながら使う
- 機密性が特に高い作業(人事評価、M&A関連、未公開の価格戦略など):一時チャット/シークレットチャットを使う
- 社外に絶対出せない情報:そもそもクラウド型AIに入力しない(法人プランかローカルAIを検討)
8. Copilot・Perplexity・Grok・NotebookLMの設定も一気に片付ける
主要3社以外のツールも、まとめて片付けておきましょう。
▲ その他ツールと法人プランの一覧:「学習されない」と書かれているものは設定不要です
Microsoft Copilot(個人用Microsoftアカウント)
Copilotはプライバシー関連の設定が3つに分かれています。①パーソナライズ/メモリ、②モデル学習、③パーソナライズ広告です。学習を止めたいなら②を操作します。
設定場所(copilot.com): プロフィールアイコン → プロフィール名 → Privacy → 「Training on conversation activity(会話アクティビティでの学習)」と「Training on voice conversations(音声会話での学習)」をオフ8
Windows/macOSアプリの場合はプロフィールアイコン → Settings → Privacy、モバイルアプリの場合はメニュー → プロフィールアイコン → Account → Privacy から同じ項目にアクセスします。
ここでも音声が別項目になっているのはChatGPTと同じ構造です。会話履歴は18か月保持されます。なお「You can opt-out of AI training and still have personalization turned on.(AI学習をオプトアウトしても、パーソナライズをオンにしたままにできます)」とあるので、メモリ機能の利便性は犠牲になりません8。広告設定は別途 https://account.microsoft.com/privacy/ad-settings/ で「See ads that interest you」をオフにします 。
Microsoft 365 Copilot(職場・学校アカウント)はこの記事の対象外で、Enterprise Data Protectionが適用されるため既定で基盤モデルの学習に使用されません8。
Perplexity
Perplexityは Free/Pro/Max で「AI Data Retention」がデフォルトで有効です。
設定場所: アカウント設定(https://www.perplexity.ai/account/details )→ Preferences(https://www.perplexity.ai/account/preferences )→「AI data retention」のトグルをオフ8
注意点として、Enterprise Pro/Enterprise Maxは「never used for AI training」で、アップロードファイルの保持も7日間のみ、外部プロバイダ(OpenAI、Anthropic等)ともZero Data Retention契約を結んでいます。ただしEnterpriseからFreeにダウングレードすると消費者向けポリシーが適用される(=学習デフォルトON)ため、プラン変更時は必ず再設定が必要です8。
Grok(X上のGrok)
GrokはXの投稿そのものが学習対象になる点が他と決定的に違います。公開ポスト、メタデータ、公開Spaces、公開プロフィール、そしてGrokとのやり取りがxAIと共有されます9。
設定場所: Xの設定 → プライバシーと安全 → データ共有とカスタマイズ → Grok と xAI → 「Allow your public data as well as your interactions, inputs, and results with Grok and xAI to be used for training and fine-tuning.」のチェックを外す9
あわせて次の3つも実施すべきです。
- パーソナライズもオフ:同画面の「Grok Personalization」→「Allow X to personalize your experience with Grok」
- 会話履歴を削除:Privacy & Safety → Data sharing and personalization → Grok →「Delete Conversation History」(削除は30日以内にシステムから除去)
- 投稿を非公開にする:Settings and privacy → Privacy & Safety → Audience and tagging →「Protect your posts」にチェック(これでポスト自体が学習対象外になります)
xAIも公式に警告しています。
「Please do not share personal data or any sensitive and confidential information in your conversations with Grok.(Grok との会話で、個人データや機密情報を共有しないでください)」9
NotebookLM(Gemini Notebook)
前述の通り設定不要で学習対象外です。ただしフィードバックを送ると「クエリ、アップロード、モデルの回答など、そのやり取りの全容」が確認される可能性があります12。Google WorkspaceまたはWorkspace for Educationの場合は、人間のレビューも学習利用もありません12。
9. 会社で使うなら:法人プランと法令の話
ここは経営者・管理職の方に特に読んでいただきたいパートです。
法人プランは「既定で学習されない」
結論から言えば、業務で本格的にAIを使うなら法人プランに切り替えるのが最も確実です。個人プランで全社員に設定変更を徹底させるより、契約レベルで解決したほうが管理コストが低く、抜け漏れも起きません。
| 提供元 | 既定で学習対象外となるプラン |
|---|---|
| OpenAI | ChatGPT Business、ChatGPT Enterprise、ChatGPT Edu、APIプラットフォーム11 |
| Anthropic | Claude for Work(Team/Enterprise)、Claude for Government、Claude for Education、API(Amazon Bedrock、Google Cloud Vertex AI経由を含む)6 |
| Google Workspace(Gemini for Workspace)——管理コンソールで管理者が制御3 | |
| Microsoft | Microsoft 365 Copilot(Entra IDアカウント、Enterprise Data Protection適用)8 |
| Perplexity | Enterprise Pro、Enterprise Max8 |
Google Workspaceの場合、法人アカウントで設定画面を開くと次のような説明が表示されます。
「組織のデータが含まれているタスクに Gemini を使用する場合、Gemini はプロンプトに応答するためにのみ使用されます。お客様のデータが、Gemini などの生成 AI モデルのトレーニングや改善に使用されることはありません。」(Google Workspaceアカウントでの表示)
「Gemini で使用されるデータは、Gmail や Google ドキュメントといった Google のコアサービスで使用されるデータと同様に保護されます。」(同)
Google Workspaceは「個人では変更できない」
実務上、混乱が起きやすいのがここです。会社のGoogle Workspaceアカウントでログインしている場合、Geminiのアクティビティ設定は管理者管理になります。
「この記事で取り上げる Gemini アプリ アクティビティは、個人用アカウントが対象です。仕事用または学校用のアカウントで Gemini アプリを使用している場合、Gemini アプリ アクティビティの設定は Google Workspace 管理者によって管理されます。データ保持設定を変更できない、またはチャット保持期間を確認できない場合があります。」3
実際の画面には「このアクティビティの設定を変更できるのは管理者のみです」と表示されます。これを見た社員が「設定を変えられない、うちの会社は危ない」と誤解するケースがありますが、Workspaceの場合は既定で学習対象外なので、むしろ安全な状態です。この点は社内説明の際に明確に伝えるべきポイントです。
逆に注意すべきは、個人のGmailアカウントで業務データを扱ってしまうケースです。ブラウザで複数のGoogleアカウントにログインしていると、意図せず個人アカウント側のGeminiを使ってしまうことがあります。「会社の情報は会社のアカウントで」を徹底するために、ブラウザプロファイルを分ける運用が有効です。
個人情報保護法の観点:設定確認は「義務に近い」
冒頭でも触れましたが、改めて正確に押さえておきます。個人情報保護委員会は2023年6月2日の注意喚起で、個人情報取扱事業者に対して2点を求めています。
「① 個人情報取扱事業者が生成 AI サービスに個人情報を含むプロンプトを入力する場合には、特定された当該個人情報の利用目的を達成するために必要な範囲内であることを十分に確認すること。」10
「② 個人情報取扱事業者が、あらかじめ本人の同意を得ることなく生成 AI サービスに個人データを含むプロンプトを入力し、当該個人データが当該プロンプトに対する応答結果の出力以外の目的で取り扱われる場合、当該個人情報取扱事業者は個人情報保護法の規定に違反することとなる可能性がある。そのため、このようなプロンプトの入力を行う場合には、当該生成 AI サービスを提供する事業者が、当該個人データを機械学習に利用しないこと等を十分に確認すること。」10
②の後段が決定的です。「機械学習に利用しないこと等を十分に確認すること」と明記されています。つまり、顧客名や従業員名を含むデータをAIに入力する業務がある場合、学習オフ設定または法人契約の確認は、コンプライアンス上の必須手続きだと解釈すべきです。
一般利用者に対しても、同委員会は「生成 AI サービスを提供する事業者の利用規約やプライバシーポリシー等を十分に確認し、入力する情報の内容等を踏まえ、生成 AI サービスの利用について適切に判断すること」を求めています10。
社内ルールに落とし込むときの勘所
コンサルティングの現場で実際に機能している型を挙げておきます。
第一に、使うツールを絞ることです。「AIは自由に使ってOK」は管理不能です。会社として承認したツールを2〜3個に限定し、それらは法人契約で押さえます。
第二に、入力禁止情報を具体的に列挙することです。「機密情報は入れないように」では誰も守れません。「顧客の氏名・連絡先」「未公開の価格表」「従業員の評価・給与」「取引先との契約書原文」のように、自社の業務に即した具体例のリストにします。
第三に、代替手段を同時に提示することです。禁止だけでは業務が止まり、結果として個人アカウントでの隠れ利用(シャドーIT)が増えます。「顧客名はA社に置き換える」「議事録は固有名詞を伏せてから要約させる」といった実行可能な代替手順をセットで配ります。
第四に、👍👎ボタンを押さないルールを明文化することです。第6章で述べた通り、これは設定でカバーできない人的リスクです。
10. 設定をやってもなお必要な「入力の作法」六つ
設定を完璧にしても、リスクをゼロにはできません。3社すべてが「機密情報を入れないでほしい」と明言している事実は変わりません。最後に、設定と併せて実践すべき入力の作法をまとめます。
作法1:固有名詞を置き換える
最も効果が高く、最も簡単な対策です。「株式会社〇〇の田中部長に提出する見積書」ではなく「取引先A社の担当者B氏に提出する見積書」と書きます。AIの回答品質はほとんど落ちません。むしろ抽象化されることで、汎用的で使いやすい回答が返ってくることも多いです。
作法2:数値をぼかす、あるいは比率にする
「原価1,240円、売価1,980円」を「原価を100としたとき売価は160」と変換します。相談したい構造は保ったまま、具体的な取引条件は伏せられます。
作法3:ファイルの丸投げを避ける
契約書や顧客リストのファイルをそのままアップロードするのは最もリスクが高い行為です。必要な部分だけを抜き出し、固有名詞を置き換えてから貼り付けます。
作法4:要配慮個人情報は入力しない
病歴、信条、社会的身分、犯罪歴などは個人情報保護法上の「要配慮個人情報」で、取り扱いに原則本人同意が必要です。従業員の健康情報などをAIに入力する行為は、設定に関係なく避けるべきです。なお個人情報保護委員会は2023年6月、OpenAIに対しても要配慮個人情報の取得と利用目的の通知等について注意喚起を行っています10。
作法5:定期的に設定を見直す
AIサービスの仕様変更は頻繁です。Anthropicは2025年8月に消費者向け規約を改定し、学習の扱いを変更しました6。設定は一度やれば永久に安全というものではなく、四半期に一度は確認する運用が現実的です。アップデート後にUIが変わり、設定項目の位置が移動することもあります。
作法6:アカウントの使い分けを徹底する
学習オフの設定はアカウント単位です。仕事用と個人用でアカウントを分けている場合、両方で設定が必要です。またブラウザで複数アカウントにログインしていると、意図しないアカウントで作業してしまうことがあります。ブラウザプロファイルを分けるのが確実です。
11. チェックリスト(社内共有用にコピーできます)
ここまでの内容を、実行可能な手順に落とし込みました。上から順に潰していけば、約10分で完了します。
▲ チェックリスト:印刷して手元に置くか、スクリーンショットで保存してご利用ください
テキスト版も置いておきます。社内共有用にコピーしてお使いください。
■ ChatGPT(約3分) □ 設定 → データ コントロール →「すべての人のためにモデルを改善する」をクリック □ モーダル内のトグル①「すべての人のためにモデルを改善する」をオフ □ トグル②「音声記録を含める」をオフ □ トグル③「動画記録を含める」をオフ □ 「実行する」ボタンを押して確定 □ 過去の会話に機密情報があれば削除(エクスポートで内容確認 → 削除) □ Codexを使っている場合は https://chatgpt.com/codex/settings/general も確認 ■ Claude(約1分 ) □ 設定 → プライバシー →「AIモデルの改善にご協力ください」をオフ □ トグルがグレーになったことを確認(保持期間が5年→30日に短縮) □ (任意)「ロケーションメタデータ」もオフ ■ Gemini(約3分) □ https://myactivity.google.com/product/gemini を開く □ 「オン」ボタン →「オフにする」または「オフにしてアクティビティを削除」 □ 「管理者のみ変更可」と出た場合は会社アカウント(=既定で学習対象外なのでOK ) □ 履歴を残したい場合は、オンのまま自動削除を「3か月」に変更 □ 「音声や Gemini Live の動画と画面共有」がオフであることを確認 ■ その他のツール(使っている場合) □ Microsoft Copilot:Privacy →「Training on conversation activity」「Training on voice conversations」をオフ □ Perplexity:Preferences →「AI data retention」をオフ □ Grok/X:プライバシーと安全 → データ共有とカスタマイズ → Grok と xAI をオフ+会話履歴削除 □ NotebookLM:設定不要(フィードバックを送らないことだけ注意) ■ 運用ルール(習慣化) □ 👍👎の評価ボタンは押さない □ 顧客名・単価・個人情報は置き換えて入力する □ 機密度が高い作業は一時チャット/シークレットチャットを使う □ 四半期に一度、設定を見直す □ 会社での本格利用は法人プランに切り替える
12. よくある質問
Q1. 学習をオフにすると、AIの回答品質は落ちますか?
いいえ、落ちません。学習オフは「あなたのデータを次のモデルの教材に使わない」という設定であり、今使っているモデルの性能には影響しません。メモリ機能(過去の会話を覚える機能)も別設定なので、パーソナライズの利便性も維持されます。
Q2. 過去に入力してしまった情報は取り消せますか?
完全には取り消せません。会話の削除はできますが、すでに人間のレビューを経たデータや、すでに始まっている学習に含まれた分は削除できません。GoogleはレビューされたチャットをアカウントIDと切り離した形で最長3年保持すると明記しており3、Perplexityは「過去に収集された学習データは削除できない」と明言しています8。だからこそ設定を「今すぐ」行う意味があります。
Q3. 設定はスマホとパソコンで別々に必要ですか?
主要サービスはアカウント単位で同期されます。OpenAIは「Once you turn off model training, the setting applies to your entire account.(モデル学習をオフにすると、設定はアカウント全体に適用されます)」と明記しています1。ただしアカウントを複数持っている場合は、アカウントごとに設定が必要です。
Q4. 無料プランでも設定できますか?
はい、できます。無料・Plus・Pro等のプランに関係なく設定可能です。OpenAIは「Can I turn off training at any time? Yes — you can change this setting anytime. There are no restrictions.(いつでも学習をオフにできますか? はい、いつでも変更でき、制限はありません)」としています1。
Q5. 設定をオフにしたら、会社のコンプライアンス上は問題ないと言えますか?
個人プランでの設定オフだけを根拠に「問題ない」と断言するのは危険です。理由は3つあります。第一に、👍👎ボタンなど設定が及ばない経路が残ること。第二に、全社員が確実に設定した保証がないこと。第三に、設定はユーザーが任意に変更できるため、組織的な統制になっていないことです。個人情報を含む業務でAIを使うなら、法人契約による契約レベルの担保を推奨します。なお、具体的な法令適合の判断については、自社の状況に応じて弁護士等の専門家にご確認ください。
Q6. 「学習オフ」と「一時チャット」はどちらを使うべきですか?
併用が理想です。学習オフはアカウント全体のベースラインとして設定し、その上で特に機密性の高い作業では一時チャット(Claudeではシークレットチャット)を使います。一時チャットは履歴が残らないので、日常業務すべてに使うと不便です。
Q7. Geminiをオフにすると何が使えなくなりますか?
公式に「この設定をオフにすると、一部のアプリ連携は利用できなくなります」と記載があります3。また過去の会話を見返せなくなります。履歴の利便性を優先したい場合は、オフではなく自動削除期間を3か月に短縮する運用が現実的です。
Q8. Claude Codeやその他の開発ツールも対象ですか?
はい。Claudeの学習設定の説明文には「チャットやコーディングセッションのデータ」と明記されており、Claude Codeも同じトグルでカバーされます。ただし法人プラン(Claude for Work等)のアカウントで使っている場合は、そもそも学習対象外です6。ChatGPTのCodexは別設定なので、個別に確認が必要です1。
Q9. AIの学習に使われたデータは、他社に売られていますか?
3社すべてが明確に否定しています。OpenAIは「Does OpenAI sell my data? No.」1、Anthropicは「We do not sell users’ data to third parties.」5、Xは「Does X or xAI sell my data? No.」9 と記載しています。またGoogleは「Google は、Gemini アプリとの会話を広告を表示するためには使用していません。今後この点を変更する場合は、明確にお知らせします」としています3。
Q10. 社内で周知するとき、どこから説明すればいいですか?
「実際の履歴画面を見せる」のが最も効果的です。Geminiのアクティビティ画面や、ChatGPTのデータエクスポート結果を見せると、「自分がこんなに情報を入れていたのか」という実感が生まれます。抽象的なリスク説明より、自分のデータを目で見るほうが行動が変わります。
おわりに:正しく怖がって、正しく使う
かなり長い記事になりました。細部は必要になったときに読み返していただければ十分ですが、持ち帰っていただきたいのは次の三点だけです。
一つ目。ChatGPT・Claude・Geminiは、初期状態ではすべて学習オンです。 そして各社が公式に「見られたくない情報は入れないでください」と警告しています。設定変更は特別なことではなく、提供元が想定している当然の手続きです。
二つ目。設定は「今すぐ」やる価値があります。 オプトアウトは基本的に未来のデータにしか効きません。すでに人間がレビューしたデータや、学習が始まった分は取り消せません。1日遅れるごとに、取り消せないデータが積み上がります。
三つ目。設定だけでは足りません。 👍👎ボタンを押せばその会話全体が学習対象になります。安全性チェックでフラグが立てば例外的に利用されます。だから「固有名詞は置き換える」「機密情報はそもそも入れない」という入力の作法が、設定と同じくらい重要です。そして会社として本格運用するなら、個人プランの設定に依存せず、既定で学習対象外の法人プランを選ぶのが正解です。
AIを使わない選択はもう現実的ではありません。だからこそ、正しく怖がって、正しく使う。その最初の一歩が、今日の10分です。
この記事が役に立ったと感じていただけたなら、ぜひ同じチームの方にも共有してください。自分だけが設定をやっても、隣の席の人が顧客名を入力していれば、組織としてのリスクは残ります。この手の話は、全員がやって初めて意味を持ちます。
参考文献
本記事について
本記事は2026年8月1日時点で各社が公開している公式ドキュメントに基づいて作成しています。AIサービスの仕様・UI・プライバシーポリシーは頻繁に変更されるため、実際に設定する際は必ず各社の公式ヘルプで最新の記載をご確認ください。また、本記事に含まれる法令に関する記述は一般的な情報提供であり、個別事案における法令適合性の判断については弁護士等の専門家にご相談ください。
記事内の画面図は、実際の設定画面(日本語UI)の構造・項目名・説明文を確認したうえで作成した再現図です。実際の画面はバージョンやプランにより表示が異なる場合があります。
初出:2026年8月1日
WRITERライター紹介
黒山結音
NEXT INNOVAITION 代表取締役
「AIは現場で使えなきゃ意味がない」を掲げ、30社以上にAI顧問として導入から定着までサポート。OpenClaw・Claude・ChatGPTなどAIツールを実務でフル活用し、AI駆動経営を実践。本メディアでは、実際の現場で効果が出た事例や、AI初心者がつまずく「最初の一歩」を、専門用語を極力使わずに解説します。
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